解雇事由の規定について

たまたま目にした『ジュリスト』2014年4月号に、解雇事由の規定について、「なるほど」と考えさせる論文がありました。大阪大学の小嶌教授の論文です。

 

「解雇規制が厳しい」という前に、解雇を困難にした責任の一半は使用者の側にある。使用者は自らの「甘い」姿勢を反省すべしというものです。

その一つの例で解雇事由の規定に触れられています。

 

厚生労働省労働基準局監督課作成のモデル就業規則(H25.4)は、特に中小企業などでは参考にされ、あるいはいくつかの条文をそのままコピーしているところが多いと思いますが、その第49条(解雇)において各号で解雇事由を次のように規定しています。

 

①勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき

②勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき

・・・・・

③ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき

 

 

解雇の有効・無効の最終判断は裁判所が行うこととなりますが、「このような解雇事由に該当するのは、文字通り例外的なケースに限られる」と、裁判官が判断したとしてもおかしくない、との指摘です。

 

「著しく不良」でなければ解雇も本採用拒否もしない、と規則に定めを置いた以上、使用者はその約束に拘束されます。解雇は不当であり無効と判断されたとしても「できないことを約束した」使用者に責任がある、とされているのです。

 

 

厚生労働省のモデル就業規則等々は確かによく考えられ作成されておりますが、その使い方には注意を要します。

 

同じモデル就業規則第49条(解雇)第2項にある解雇予告手当の規定でも、労基法を踏まえて

「予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。」

としています。

 

高年齢者雇用アドバイザーとして企業訪問時に就業規則を見せていただく機会がありますが、そのまま「30日分以上の手当」としている例をよく見ます。「30日分の手当」と言い切るべきところです(もちろん「40日分」などとされてもよいですが、)。

 

 

ちなみに、私の属する神奈川県社会保険労務士会の労務診断部会で先年作成した就業規則ひな型では、解雇事由について次のように規定しています。ご参考まで

 

 (1) 試用期間中の者について、従業員として不適格と認められるとき

・・・・

(3) 業務遂行能力、又は能率が劣り、上達の見込みがないとき

・・・・

(6) 勤労意欲が低く、又は勤務成績、勤務態度、業務能率など就労意欲が不良で就労に適さないと認められるとき