「同一労働同一賃金」と高齢者雇用 (1)

 

高年齢者雇用アドバイザー(以下AD)としてつながりのできた相模原職安で、昨年暮れ(125日)に標記の題名で話しする機会を得ました。今騒がれている話題であり、多くの企業の皆さんの聴講を期待しましたが、数名の方のご参加でした。以下、そのときのストーリーを備忘としてまとめましたので、少しずつ本欄に掲載させていただきます。

「本日、与えられたテーマの一つ「同一労働同一賃金」は、非正規労働者の比率が高くなり、正規労働者との処遇格差が拡大し二極分化が激しいこと、一方で正規労働者は、特に長時間・過重労働の問題等働き方の変革が求められる厳しい状況となっていることから、喫緊の課題として国を挙げて取組みが進められているテーマです。

 

・これまでの論議・判例等を整理し、高齢者雇用との関連で、企業として労務管理面でどのような取り組みが必要かを探っていきたく考えました。しばしお付き合いください。

・高齢者雇用に関して、2013年の改正高齢法で、65歳までの継続雇用確保策として3つの施策のいずれかを採用することが、義務化されました。
・各社の採用制度については、先日(10/28)公表された数値は上表のとおりです。AD訪問先でもそうですが、現役と違った処遇制度を構築できる、自由度が高い継続雇用制度・再雇用制度が80%強と多く、また、わずかですが、経過措置採用企業から希望者全員65歳まで雇用するとする方向に移行していることがわかりました。
・経過措置制度の年齢の刻みは年金の支給開始年齢の引き上げと合わせてあり、当然年金制度の安定を目指す側面はあります。が、「人生90年時代」といわれるものの、健康寿命は未だ70歳台前半にとどまります。この健康寿命を延ばし、自立した生活時間を享受するために、60歳定年後の労働の果たす役割が大きいといえます。


・ところで、厚生労働省は継続雇用制度拡大・推進に当たり、処遇条件は各社の実態に沿って決めてもらうとしてきたはずでした。雇用保険の高齢者雇用継続給付金も多少の賃金ダウンは雇用保険で補充すること、賃金ダウンを前提の制度。

・実際、再雇用制度適用者の定年前との労働条件の変化は上表のとおりです。中労委の調査ということで、労働組合のある大手企業が調査対象となっているのか、我々ADが企業訪問していると、その処遇につき「定年前と変わらない」とされる企業も感覚として1割強あるように思います。

・このような状況の下、5/13の東京地裁で衝撃的な判決が下されました。AD活動の訪問先においても話題となりました。

 

・裁判長は、当該企業の高齢者処遇を、労契法20条適用問題として整理し、この事案で原告勝訴としたのです。

 

・判決をめぐっては、直接適用されるべきではないパートタイム労働法を判断材料とするなどいくつかの点で問題だとされています。ただ、私たちADの常識からは外れますが、後述するように法律の厳密な解釈としては的を射ているとも見ることができます。

 

 

・裁判長は、「賃金を定年前より下げることの合理性が認められるべき」とは判示されているのですが、・・・。

以下、次回に続きます。