「同一労働同一賃金」と高齢者雇用(4)

 

同一労働同一賃金の実現に向けての検討会議での議論や裁判の行方を踏まえ、12月の職業安定所での話として、企業としては次の様な点を当面配慮する必要があるとしました。

 

 

まず、何よりもこれからは人事労務管理の諸場面で企業として説明責任を求められることを自覚し、理論武装をしていく努力を行わなければなりません。①「職務の内容」、②「人材活用の範囲」、③「その他の事情」それぞれについて現状を精査し、相違点を抽出しておくこと。賃金に格差のあるとすればその理由や根拠等を説明できるようすることです。特に①②に明確な差異が認められないとすれば、職務の再編をして①②に明確な違いを創り出すことも検討項目です。

 

 

 

また、就業規則をそれぞれの契約身分ごとに作成し、他の契約身分の就業規則を「準用する」ことなく、それぞれ1本の就業規則で完結させることです。よく言われることですが、代替可能性の高い職務をパートタイム労働者に担当してもらっているケースでは、その就業規則において休職に関する規定を設けるかどうか、設けるとしても期間の長短もあります。地域事情もあり得ます。などなど企業ごとに考え方があると思います。一般に勤務時間、勤務地、遂行職務に無限定とされる正社員に適用される規則を読むことで「格差」に対する誤解を招く懸念もあり得ます。

 

さらに言えば、高年齢者雇用における処遇制度はそれ単独で成立しません。企業の基幹である現役社員の処遇の延長線上に構築されるものです。現役層の賃金カーブの在り方、各賃金項目の意味と配分、年功型賃金体系の見直し等々、これを機会に人事賃金体系の見直しも視野に置いた計画を作られ、実践されることを検討されたい、としました。

 

なお、定年後も人によって部課長職を延長するケースがあるとされ、その理由に「後任が育っていない」ということを挙げられる企業に時々出会います。人事労務担当として、後任候補の育成に期限を切っているか、と問うと本人に任せている例が多く見受けられます。期限管理の意識は持っておくことをアドバイスしている旨付言しました。

 

 

ただ、現役時代の「賃金」と「貢献」との関係は、日本の賃金体系の一般的な在り方として、上記ポンチ絵等を引用しましたが、定年までで貸し借りを清算するとよく説明されます。定年後は遂行職務の市場価格をベースとする、とすれば、定年後は定年前の「貢献」より高い「賃金」水準はとり得ず、「貢献」に見合った「賃金」水準に設定する、という考え方は、それなりに「あり」ではないか、とも考えるところです。いずれにせよ、この辺りは最高裁判決が出てから見直しが必要かもしれません。

 

 

上記は、『エルダー』(高齢・障害・求職者雇用支援機構発行の月刊誌)の昨年4月号に掲載された記事にあった表(一部加工)です。定年前の職務内容・責任、職務変更と就業拘束性を15の評価項目に分類し、定年前の役割率をそれぞれ100と置き、定年後遂行してもらうレベルを評価することで、賃金水準の説明用データを設定するというものです。表では、定年前が1500点とし、定年後の評価は980点であり、約65%となるためその賃金を65~70%とするなどの説明ができるようにするというものです。該当者の前にこれを広げて、「だから定年後処遇を・・・にしています。」では、個別の項目ごとの評価をめぐり際限ない議論になりかねませんが、考え方としては大いに検討に値するものと考えます。

 

 

 

12月初旬に話をさせていただいたのは、そのほか日本と欧米での雇用契約の差異の確認などもありますが、おおむね以上です。

 

その折、昨年3月に検討会議に提出された水町教授の賃金項目等に関するガイドライン案に向けての「合理的理由」の整理に関してもシートにしましたが、会議の中間報告として、昨年末(1220日)にガイドライン案が示されました。多少気になる記述もありますが、同一労働同一賃金に関し、今後この案をめぐってさらに練り上げられ日本型同一労働同一賃金の在り方が固まることとなります。注目していきたいと考えます。

 

資料3

 

 

以上で終わります。