名文どろぼう

 古書店で、題名に魅かれて『名文どろぼう』(竹内政明著:文春新書)を購入し、楽しく読んだ。著者は、長く新聞記者を務めた人で、古今東西の書からよくもまあ、気に入った文章を多く書き留められたものだと感心する。思わず吹き出した「名文」もある。「学問の自由はこれを保障する」(憲法23条)、「相続は死亡によって開始する」(民法882条)等、憲法や法律などの七五調が気に入っているなど、面白い。私も読んだことのある書物からの文もいくつか名文として紹介されている。改めて、なるほどと思った。

 薄田泣菫の「茶話」からの引用(著者は「盗んだ」とする。)もある。読みやすい中国史の新書をいくつか発刊している岡本隆司氏が、文章の鍛錬のために参考したと紹介されていたことから、私も読み進め、途中で放り出したコラム集(『完本茶話』上中下の全三巻:冨山房百科文庫)である。再度チャレンジする気が湧いてきた。泣菫(1877-1945)は、茶話を大正4年から昭和5年1月の擱筆まで、筆が乗っていたときにはほぼ毎日のように書いている。すごみさえ感じる。毎月のこのコラムを書くだけで、頭を悩ましている身には何とも羨ましい筆力である。