行方不明者の雇用終了

3月5日、芝公園にある会議場で、(社労士)連合会関東甲信越地域協議会による年1回の研修会が開催されました。


研修会はいつも午前の基調講演、午後は6分科会に分かれて研修し、夕方から名刺交換等懇親会といった流れで進められます。開業以来、毎回参加させていただいています。


今回研修会では、神奈川がその1つの分科会を担当することになりました。

テーマは 「中小企業のためのモデル就業規則」 で、私も参画してまとめた就業規則をまな板の上に載せて、参加者で討議していただくというものでした。


参加者のお一人から、最初にでた質問が標題に関するものでした。

 

正社員1名、パート数名で営まれている小規模事業所において、その正社員が突然いなくなった。同居の親族とも連絡を取り合っているが、動機もなにも不明であるとのこと。

就業規則もない企業であり、労基署に相談した上で、現在解雇手続として公示送達を行うべく、裁判所に何度か足を運んでいるが、公示送達のための準備作業が容易でないとのことでした。


これは、教材として用意した就業規則の退職事由の条文中に、次の場合定められた日をもって退職とする、とした中に  「会社に連絡がなく50日を経過して会社も所在を知らないとき 50日を経過した日」

との規定があることに関する質問でした。


就業規則規定の根拠は、

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約申入れ)第2項 「期間をもって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以降についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」 

との規定に拠っています。

 

但し書を厳格に捉え、当期の後半に申入れがあったとすれば、15日+1か月で45日。

余裕をみて失踪後「50日経過後」を退職日とするというものです。

 

経営サイドに立つ石嵜弁護士もこの見解をとられているようですが、これには、「50日経過後」とはあまりに長すぎる、本人は報酬へのこだわりも捨てての失踪であろうため、「解約の申入れは、次期以降」であればよいとして「30日経過後」で良いとする見解も多く見かけます。


いずれにせよ、就業規則への規定化をしておくことが必要という事例です。