「同一労働同一賃金」と高齢者雇用 (2)

 

東京地裁の判決(513日)の20日後、62日に「日本一億総活躍プラン」が閣議決定されました。いくつかの施策プランの一つに「同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善」があり、国としての取り組みが示されました。(2015年9月に公布された「同一労働同一賃金推進法」が原点)

パートタイム労働者と正規労働者の格差につき、ヨーロッパでは2割程度。日本では4割低いとして、1996年の「丸子警報器事件」判決がプランに例示されています。地裁支部の判決ですが、社労士でこれを知らない人はいないほどの有名な判決です。同一ラインで同一の職務を担当していたパート労働者の賃金が4割低い。せめて2割減程度であれば・・・というもの。この判決後同社では契約の見直しを実施したとのことです(高裁で和解)。

 

3/23から「同一労働同一賃金を実現に向けての検討会」でガイドライン作りが論議されています。労契法、パート法、派遣法の一括改正が計画化されています(日程前倒し方向)。

 


検討会議初回会合(323日)で東大の水町教授が、同一労働同一賃金に関し、今後の検討方向を示しています(後述)。

 

教授は、同一労働同一賃金とは職務内容が同一または同等の労働者に対し同一の賃金を支払うべきであるという考え方をいうとし、「合理的理由がない処遇格差(不利益取扱い)の禁止」という形で条文化されることが多いとしています。「賃金」として捉えるのみでなく処遇制度全体での合理性を捉えるべきというわけです。なお、職務給制度をとるヨーロッパ諸国でも、理由がつけば給付に差が生じている事実を紹介しています。

 

さらに同一労働同一賃金については「均等」と「均衡」の両側面からとらえていくべきだとされています。(なお、水町教授は9/28スタートの「働き方改革実現会議」のメンバーで、同会議から12月に格差に関するガイドライン案が公表されました。)



厚生労働省は初回の検討会議(3/23)に、同一労働同一賃金に関する現行制度を上表のように纏め提示しています。さすがに良くまとまったシートです。このシートでは均等待遇と均衡待遇について次のように整理されています。
均等待遇:待遇について差別的取り扱いをしてはならない。司法判断の根拠法規となり得、また、行政指導の対象でもある。
均衡待遇:待遇の相違は、ⅰ職務の内容、ⅱ人材活用の仕組み及び運用ⅲその他の事情を考慮して不合理であってはならない。司法判断の根拠法規となり得るが、行政指導の対象ではない。

次回に続きます。

 

※前回からかなり日が経過してしまいました。パスワードの管理が悪く、そうこうするうち登録メールアドレスもわからなくなってJIMDOさんの世話になる始末。皆様ご注意を。