コロナウイルス感染症の拡大が深刻化しています。本日は、時短操業により感染危険の大きいラッシュアワーでの通勤を避け、かつ、顧客へ製品を継続して供給することを計画されている企業さまから、賃金保障についてどうしたものか、との相談を受けて、お預かりした賃金データ等を加工するなど、一日かけて種々検討しておりました。もちろんメールのやり取り。在宅で。 従業員の減収を少しでも抑えたいとの配慮をしつつ、かつ、企業存続を確実にするために、各社様必至です。
そのような中、本日の報道によると、大手のタクシー会社が、雇用調整助成金を得て雇用継続を目指すより、この事態が収まるまで一旦解雇することの方が会社、従業員双方にとってメリットがあるとされて動かれたとのことです。確かに乗客数が極端に減っているようです。苦境をいかに克服するか必死に頑張っておられます。本日はそのようなタクシー会社の歩合給を採り上げます。3月末には歩合給をめぐる最高裁判決も出ました。難問です。
いずれのタクシー会社もドライバーの賃金は、月の稼ぎ高にリンクさせ、概ね50%前後の歩合率によるという歩合制度を取り入れているようです。ただ、顧問先の会社のそれは、いわゆる「累進歩合率」を用いておられます。歩合率を、稼ぎ高の多寡に応じてわずかずつではありますが不連続に傾斜させるという制度です。
厚労省発行のパンフレット『タクシー運転者の最低賃金について』に、「累進歩合制度の廃止」との見出しで「累進歩合制度(トップ賞や奨励加給を含む。):長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念されることから、廃止してください」と累進歩合給制度があたかも違法であるかのように書かれています。社労士の基本は遵法です。さて、どう対応したものか。
契約して早々に、その点が気になり、何度か協議したものです。が、抑々同社の制度は所轄の労基署の監督官の指導によったとのことです。制度を見直した結果で稼ぎ高の多いドライバーが辞めやしないかなどの不安もあり、答えのないまま、結果的に、そのまま放置した形で推移してきました。勤労意欲が低く、稼ぎの悪いドライバーの最賃割れ危険の対策にもなり得るので、歩合率を一律にし、差額を積上げ賞与の形で加算分を支払ってはどうかなどの提案もしたものです。
ところが、本年2月に偶々何回か労基署に詰める機会があり、相談客待ち時間に監督官とこの件を話題とした立ち話の中で、上記「廃止」せよとの指示は「法律にはない」と聞きました。つまり、「違法」ではない、というのです。厚労省の意向を踏まえつつ、他に良いアイデアがまとまれば提案していこうと思いますが、とりあえずはホッとしています。