「定年到達日」を明確にすること

 

昨日、全く初めての方からお問い合わせメールを頂戴しました。ご本人の65歳の誕生日は121日で、当初、法人担当者から定年退職日を1130だと聞いており、ご本人もそのように考えていたが、最近になり担当から121日だといわれた、とのことで、不信感を覚え、誰でもよい、社労士を検索して、何故か私にたどり着いたという次第です。安易な回答はトラブルに巻き込まれる危険もあり得るのですが、初めての定年退職事例ということで、法人側にも特に悪意があってのことではないだろうと捉え、一般的な考え方について説明し回答しておきました。

 

一口に「定年」といっても、就業規則の規定では、「定年到達日」と「定年退職日」の2つが規定されています。が、往々にして、「定年到達日」を決めていないケースがあります。例えば、厚労省のモデル就業規則の規定は、「労働者の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。」とありますが、定年到達日は一体いつなのか、皆さんはお分かりですか。

 

 

 

官公庁の場合、「年齢計算に関する法律」により、定年到達日は「誕生日の前日」としています。年金の受給申請手続きをする際の住民票、戸籍謄本の日付は「誕生日の前日以降に発行されたもの」と規定されているのはその一例です。学年の場合も、41日生まれの人は「早生まれ」とされます。

 

これが、民間の場合は特に法律の定めに従うことを要しないため、「誕生日」「誕生日の前日」と担当者に聞くと双方があり、むしろ前者の方が多い結果となります。

 

 

 

退職日が121日か1130日か、とのことですので、おそらく就業規則は「社員の定年は満65歳とし、定年に達した日をもって退職とする。」と規定されているのでしょうが、その「定年到達日」については当該法人にあっては、未定であると考えられます。どちらが良いかは何とも言えませんが、「決め」れば良い話で、誠意を持って話し合えば、紛争に発展するような事態はないと思われます。担当者が変われば扱いが違った、となると、それこそ紛争になります。

 

退職日を年度末としているケースで、かつて、41日生まれの高校の先生が、定年の誕生日の前日をもって退職だとされたことに対し、あと1年間働けるとして裁判で数年間争った結果、上記の法律により敗訴したという事例があります。