熱中症についての誤解

 

熱中症が心配される季節となりました。

 

 

ところで、「熱中症」として診断名に統一されたのは2000年頃。それまでは、日射病、熱失神、熱けいれん、熱疲労などといわれていました。日本救急医学会、環境省、厚労省などが協議して、「暑熱障害によって起きた体調不良」をすべて「熱中症」としたとのことです。

 

  

かつては、高温や高湿度の環境でスポーツや肉体労働をする10代から50代が多く発症しましたが、近年は熱波の襲来により、室内で日常生活を営む高齢者が発症する例が増えているようです。

 

そこから、「家の中にこもっていると熱中症になりやすい」といわれ、確かに熱中症が死因と推定される異常死体のほとんどが屋内で発見されているとのことで、過日、我が事務所だよりの元ネタでも、「実は熱中症の発症場所で一番多いのは『住宅』のため(2019年は熱中症搬送者の38.6%)、注意を要す。」と記述されていました。

 

 

しかし、この記述は誤解によるものです。屋外で倒れたなら、手遅れになる前に通行人が発見してくれ助かる可能性が高いのです。屋内で発見される異常死体の大半が独り暮らしの高齢者や、家族の帰宅が遅い高齢者であり、屋内は発見が遅れるリスクが高いだけで、熱中症そのもののリスクはやはり屋外の方が高いとされます。

 

そのような誤解のいくつかを記します。

 

1)「熱中症には、おでこを冷やすと良い」

 

「ヒンヤリして気持ちがいい」だけで、体温を下げる効果はない。おでこを冷やすと、おでこにあるセンサーを通じて脳が「体が冷えてきた」と勘違いし、結果、汗は止まり、欠陥も収縮し、熱が逃げなくなってしまう。もし冷やすなら、首筋、わきの下、鼠蹊部(足の付け根)の前が最適。鼠蹊部の前側には、表面近くに太い静脈が走っており、冷えた血液が大量に体内に戻っていくため。

 

 

2)「熱中症は夜も危険」

 

熱中症の死者の死亡時刻は6割が昼間、4割が夜間。ただ、熱中症の発生は圧倒的に昼間が多く、夜間はほとんどない。熱中症で即死はないので、昼に熱中症で搬送された患者が、夜に亡くなったという例が多いため。

 

 

3)「熱中症はトイレで発生する確率が高い」

 

トイレは、熱中症が発生しやすい場所というより、熱中症者が発見されやすい場所。気分が悪くなって嘔吐や下痢のためトイレに行ったが、そのままぐったりしてしまう例が多いためで、発生率が高いのは過ごす時間の長い居間と寝室。

 

 

 

*以上は2~3年前の会報誌に掲載された記事を基にまとめました。論者のお名前等を記録しないまま、久しぶりの「断捨離」に雑誌は捨ててしまったようで、引用元を示せず、ご寛容を乞う次第。