身元保証書は必要ですか

民法改正により、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であっても、保証人が法人ではないものについて、「極度額」を書面又は電磁的記録で明記することが義務付けられ、記載のない場合は無効となることとなりました。202041日以降提出の身元保証書にも適用されますが、身元保証書の提出を求めている企業には、改正により書式等の見直しも必要となるでしょう。

私の顧問先の就業規則においては、会社と協議の上、身元保証書を採用時の提出必要書類には入れないことを基本としています。本人の能力、人柄、熱意等をもって採用することとし、身元保証人を得られるか否かなど本人の周辺事情は不問とするとの考え方によっており、「公正な採用」への取組にも対応できていると考えています。

最近の調査でも身元保証書の提出を求める会社は減少して、また形骸化している会社も多々あるとの記述に接し、多少意を強くしている(ビジネスガイド20204月号木村康紀氏論文)ところです。というのも、社労士になりたてのころ、この件では、個人情報流出、金銭トラブル発生の未然防止策として、身元保証書の提出は必要だとする社労士仲間が多かったことによります。

 

私のこのような姿勢は、私が社会人となり、人事労務の担当者としてスタートした50年近く前の経験によると考えています。当時大きな話題となっていた同和対策との関連で、従業員・採用者からの提出書類及びその記載事項に関し細かな点まで要否の検討が行われていました。その中で身元保証書の提出不要と判断されたと記憶しています。新規学卒の採用が主であった時代で、会社によるしつけ教育などでの事件の未然防止が先、との考えです。

 

ところで、身元保証書の提出を受けた使用者には、

 

①身元保証された従業員に業務上の不適任や不誠実な事柄があり、身元保証人の責任につながる恐れがあることを知ったとき、

②従業員の任務又は認知を変更するなどで身元保証人の責任が重くなるとき

 

は遅滞なく身元保証人に通知する義務が生じます。

また、身元保証人はそれらの事実の通知を受け又は自ら知った時、将来に向かって身元保証契約を解除することが可能となりますが、実際には使用者からの通知はまず行われていない(*ある調査によれば、①につき88.1%、②につき98.4%の会社が不通知の由)とのことです。

 

身元保証の有効期間は、期間を定めない場合は3年。期間を定める場合も上限は5年です。見方によればあっという間です。身元保証の提出が本当に必要かどうか、見直されてはいかがですか。