国の経済が発展するにつれて出生率が低下するといわれますが、ある研究では、経済発展が極めて高いレベルに達すると、出生率が高くなっているそうです。また、1990年頃には女性の労働参加率が高い国ほど出生率が高い状況が生まれた、とライシャワー日本研究所長のメアリー・C・ブリントン氏は書いています。(『縛られる日本人』中公新書2022.9発行)
国際的な研究により、人生への満足度が高い人ほど、子どもをもうける確率が高いという強力な実証データが得られていますが、氏の調査(日本、アメリカ、スウェーデンの子育て世代へのインタビュー調査)では、日本の人たちは人生への満足度が著しく低い。日本とアメリカでは、いずれの国でも多くの人たちは、できれば子どもを2人欲しいと考えているが、日本では子育ての環境にないと否定的。次の理由によるとします。
①アメリカなどでは友人夫婦や親戚、自分たちの親などの人的ネットワークで育児や介護を行うのに対し、日本では、家族は男女のカップルと子供で構成されると狭くとらえ、また、孤立化している。
②日本では、男女に期待される社会的役割が明確に区別され、育児休業は女性のための制度であり男性は育児休業を取るべきでないという強力な社会規範がまだまだ強い。
③男性が家庭での家事と育児に費やしている時間が女性に比べ少ない国ほど出生率は低い傾向だが、北欧の男性は40%超、また、アメリカの男性は40%近いのに比し、日本の男性は 家庭での家事と育児時間の15%しか担っていない。男性は長時間の有償労働の実態がある、
など。
そして、保育園の待機児童をなくす、既婚女性の年収抑制を促す税制を見直す、育休中の給与100%保障等男性の家庭生活への参加を促す、職場の制度をジェンダー中立的なものにする、などの提言を発しています。政府は「異次元」の少子化対策を打つとのことですが、果たしてどう具体化するのでしょうか。また、企業としてはどう取り組まれますか。