つながらない権利

 自動車電話が普及し始めた、今から50年ほど前のこと、退勤されたばかりの重役から所属部宛に頻回に電話がかかってき、一瞬の緊張とともに、おもちゃを与えられた子と同じだ、などと不謹慎ながら若い者同士言い合った記憶があります。

 

 情報機器の発展、場所・時間にかかわりない労働、電話やメールのやり取りが一般的になった今日、完全な休息時間・休日の確保、私生活時間の確保に向けて、更に疲労回復時間の確保のために、欧米で「つながらない権利」の法制化が進み、日本でも議論が高まりつつあるようです。

 「つながらない権利」の欧米における法制化は、国ごとに多少差異はあり、①労働時間外に業務上の連絡に対応しなかったことを理由とする解雇などの不利益取り扱いの禁止、②労働時間外における業務上の連絡の禁止、③労使の協定や労働契約中における「つながるor つながらない」時間帯の明記の義務付け、④「つながらない」ための具体的な措置の義務付け、⑤「つながらない権利」行使のための労使交渉・企業内ポリシー策定の義務付け等に類別されるとのことです。

 

 私生活と職場生活を峻別していた欧米においても、就業時間外、休日の業務関連情報・メールの交換が多くなっているようです。2016年に世界で47900万人が週55時間以上働き、また、不名誉にも世界共通語となった日本語由来の“KAROUSHI”を招来する過重労働、長時間勤務が原因とされる脳卒中や心臓病が原因で、745千人(日本2016年約34千人)が死亡したとのことです(WHOILOの共同調査)。

 

 業務用メールは、基本的には就業時間内にやり取りすべきものです。直接指示をし忘れメールを時間外時間に発信する場合でも、翌日の必要作業時間を考慮した返信期限を設定すべきでしょう。終業時刻直前に「明日朝一番で回答をよこせ」などとメールを発信(あるいは対面で直接指示)することは厳禁ですね。