老人相談所

日本にはどこの都道府県でも児童相談所がありますが、老人相談所はありません。アメリカには、どの州にも自治体にも、高齢者虐待の問題を中心とした高齢者対応の相談所(adult protective services)が設けられており、また、高齢者自身が団体を1950年代から創設して、高齢者の各種の政策形成や問題解決に努めてきているとのことです。弁護士、公的な老人相談所、高齢者自身の団体など相談する相手先が豊富に備わっているようです。

日本は高齢化率(65歳以上の人口比率)が28%以上で世界一の高齢社会です。アメリカは約17%ですが、実数でいえば高齢者はアメリカでは56百万人と日本の約36百万人をはるかに上回っています。このため、高齢者が安心して暮らせるための法律に基づくシステム作り等が早くから検討され、研究されているようです。

日本では、1971年に高年齢者雇用安定法が成立、1995年に高齢社会対策基本法が作られ、2000年には成年後見制度と介護保険制度が開始しています。また、2023年には認知症基本法が制定されていますが、高齢化の中でも、単身高齢者の増加と認知症患者の増加が最も大きな課題であるとされます。

 

ある法学者は、日本法は個人が合理的な自己決定をする存在であることと、本人が困った時には家族が助けることを前提としており、介護保険を含め様々な公的給付も申請主義が基本だとして、本人または家族が声を上げて「支援が必要だ」といわない限り給付が行われない現状の変革、高齢社会に対応する創造的な法の仕組みが望まれるとされています。