保護者

4月初旬、桜の季節に、入学式、入社式等の行事が各所で挙行されました。

 

さて、建築家安藤忠雄氏は経済的理由から大学進学は断念されたものの、独学で名立たる建築家となられ、また、指導者として長く東京大学で教鞭をとられました。その安藤氏が、十年余前の東京大学の入学式で、入学者3,100人、2階席の「保護者」5,000人を前に、「自立した個人を作るためには親は子を切ってほしい。・・・今日は子どもの自立の日であるから、2階席の方は出て行ってください。」と祝辞の中で呼びかけたそうです(親の反応については不詳)。

確かに、私の大学入学時(60年近く前)の式典には親の姿は少なかったですが、近年は、各大学の入学式に多くの「保護者」が参列されるようです。大学からの式典案内などにも「保護者の方へ」の添え書きがあるようです。多くは、もちろん「保護」目的ではなく、子と喜びを共にしたく参列されるのでしょう。しかし、安藤氏の呼びかけの意図するところに賛同です。これまでは、教えられた知識を繰り返すことで身に着ける「学習」をしました。これからは学んで得た知見を、正解のない社会で解を自ら問い続けていく「学問」のときに入るというのが、大学入学式という意味合いでしょう。その自立の自覚を学生本人に促し、参列された「保護者」にも子離れの意識を持つべしとの発言と見ます。

ちなみに「保護者」とは、未成年の子供などを保護する義務のある人の意ですので、成人が18歳以上となった今、まさに大学入学の歳にあたります(私は1年遅れましたが。)。

子の親離れしない以上に、親の子離れしないことが問題です。「可愛い子には旅をさせよ」「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」などということわざは、近年はとんと聞きません。

インターネットを見ると、「保護者」に対する個別面談を実施する大学や、「保護者会」「父母会」が熱心に活動する大学が増えているようです。

 

更に、子を手元に置きたがる親心を捉え、企業では親向けに企業説明会を企画したり、親を入社式に招待したりするところも増えていると聞きます。どうしたものですかね。